タバコ芸
大学生になって酒を飲むことを覚えた私が、一時期熱中したのは宴会芸である。当時は居酒屋の勃興期で、ぼちぼち酒の飲み方が多様化してきたという話は以前にも書いた通りだが、まだまだ飲み方を知らない私はしょっちゅう悪酔いしていた。「これではイメージが悪い・・・」と焦った私は、当時流行していた宴会芸を磨くことで挽回を図ろうとしたのだ。
特に私が練習したのは、「タバコ芸」である。煙で輪っかを作ることから始めて、吸い殻を天井に付着させるワザ、火玉を指でつまむ秘技、空きボトルに火の粉のベールが降りる幻想的な技術などを次々にマスターした。なんせ、凝り性なのである。
その中でも最大の荒技は「燕返し」というやつである。これは短くなったタバコ(もちろん火がついている)をくわえて、上の歯と下唇を支点にして「口の中で縦に」回転させるという大技である。私は血のにじむような練習を重ね、このワザを取得した。今でもできると思う。
もちろん、こんな事で合コンでモテることはないのだが。
時を経て、私はとっくの昔に禁煙した。まさか煙草を吸うという行為が、ここまで嫌われるとは思っていなかったな。せっかく習得した技術も、無駄もいいとこである。まあ、それ以前にこんな事をやる方がバカそのものである。
さすがに当時の私はキワモノ芸だけでは座が持たないことぐらいは知っていて、合コン用に用意していたのには、別の話題もある。それは懐古ネタを振ることであって、しょっちゅう「君はワタナベのジュースの素を覚えているか?」とかやってたような気がする。
この辺の芸風は、あまり進歩がない。困ったことである。
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